「自分の目で見て感じたことを表現しなさい」作家、堀江誠二さんの思い出

2020年10月9日金曜日

ふるさとZIP探偵団

t f B! P L
お早うございます。早起きディレクターです。
TVディレクターの演出のやり方は人それぞれです。
台本通りきっちり撮影しなければ気がすまない人もいれば、台本など無視してどんどん崩していくことを好むタイプもいます。
僕は後者です。

でもそれはもしかしたら僕のように自分でロケハンして自分で台本を書くタイプだから言えることかもしれません。
もし作家さんに台本を書いてもらっている場合ならば勝手に変更するのも気を使うでしょうし。


テレビを教えてくれた作家先生


かつて僕が一緒に仕事をした作家さんの中には、僕がどんどん現場で予定台本をアレンジすることをいつも楽しみにしてくれる人がいました。
堀江誠二さんという構成作家さんです。

30代の頃に担当していた関西ローカルの旅番組「ふるさとZIP探偵団」
佐藤蛾次郎さん、原田伸郎さん、新藤栄作さんら3人の探偵が近畿を旅しながら人々と触れ合う旅番組です。
当初その番組には当初、構成作家さんが3人いました。
それぞれに個性的でみんな僕より年上でしたが、その中でも大御所の堀江さんは21歳年上。
歳は離れていますがクセのある僕の性格を妙に気に入ってくれたようで、よくコンビを組ませてもらい一緒に旅をしました。
そして酒を飲みながら色々な話をし、色々なものの見方を示唆してくれました。(あくまで示唆です)



堀江さんはテレビの仕事と並行して歴史雑誌に紀行文なども書かれていましたから日本の歴史や風土には造詣も深い。
でも宗教関連にはあまり関心がないのか、寺や神社に行っても決して手を合わそうとはしませんでした。
若い頃は激しい学生運動を経験されたそうで、そこでの複雑で決して綺麗事ではない人間関係を体験した結果、ある独特な考えを持つに至った(ちょっとアナーキーな?)・・・ある夜、ふたりで酒を飲みながら聞いたことがあります。

でもその深い知識と鷹揚な人柄は僕のような若いディレクターの尊敬の的でした。
たまに僕が堀江先生と呼ぶと「人を先生呼ばわりしないでくれ」とまじに照れていたこともありました。
そんな堀江さんからはたくさんのアドバイスをもらいましたが一番印象に残っているのが出会って3年目くらい、35歳くらいの時に言われた言葉です。

「君は他人の歌を歌わずに自分の歌を歌いなさい。

その時は「また、かっこいいこと言わはるな」くらいにしか思っていませんでしたが時がたつにつれてその言葉が自分の中で重みを持ってきました。

「自分の目で見て自分で感じて自分で考えたことを映像で表現しなさい。そうすれば人に伝わる」
きっとそういう意味だったのだと今では思っています。

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堀江さんは今から14年前。67歳でこの世を去りました。
死因は肺がんです。
番組も終わりしばらく会っていなかった桜の季節に訃報を聞きました。でも僕はその知らせを聞いた時に驚きとともにある種、納得のようなものも感じました。

最後まで自分の心と体のことを客観的に見つめながら、病院のベッドで執筆した闘病記があります。
本のタイトルは「まどろみの海へ」
表紙の海の写真は堀江さんが大好きだった南の島のものです。
堀江さんの遺骨はその島の海の沖合に散骨されたと奥様から聞きました。




堀江誠二

ノンフィクション作家、テレビ構成作家。1939年(昭和14年)大阪生まれ。映画会社宣伝課勤務、業界紙記者、コピーライター、PR誌編集者などを経て、企画集団アクトを主宰。大阪在住のテレビ構成作家として、『プロポーズ大作戦』(朝日放送)、『ふるさとZIP探偵団』(関西テレビ)をはじめ、人気テレビ番組の企画、構成を数多く手がけるとともに、近代日本の芸能や昭和史を得意分野とするノンフィクション作家として活躍。著書に「吉本興業を創った人々」「悪声伝ー広沢兵衛門の不思議」「チンドン屋始末紀」など
2005年10月に末期肺癌で入院。半年の闘病生活の後、2006年3月28日逝去


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プロフィール

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大阪市, 大阪府, Japan
関西在住。早起きのベテランTVディレクターです。これまで旅モノやドキュメンタリーを中心に活動。MBS「ちちんぷいぷい」の旅コーナー”『とびだせ!えほん』『前略、旅先にて』やKTV「ふるさとZIP探偵団」などを担当していました。 テレビ業界での経験話からドラマや音楽論。そして趣味の占星術まで色んなジャンルの話題をつづっています。

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