ディレクターは臆病なもんです
お早うございます。早起きディレクターです。
「ディレクターはちょっと”臆病”な部分をもっているくらいでいい」
これは僕の持論です。もちろんあんまり気が弱すぎるのは問題ですが。
番組を放送する前にはチェック項目が無数にあります。
それこそVTRの内容の面白さはもちろん、テロップやナレーションに間違いはないか。使用した音楽や写真などの著作権はクリアーしているのか。画面に写っている人々の肖像権は大丈夫か?さらに差別的な表現や誰かを傷つけるような言い回しはしていないか。情報は本当に正しいのか?理論に裏付けはあるのか?コンプライアンス的には大丈夫か。
臆病だから万事に慎重になります。
福島天満宮で流れた「祭の花を買いに行く」
慎重なディレクターは何度も何度も確認して、時にはプロデューサーなどに相談しながら問題事項をひとつひとつしらみつぶしにしていきます。それで解決しても放送直前まではやっぱり、はらはらどきどきしながら時間を過ごします。
たとえば一昨日に放送した「とびだせ!えほん」の場合なら最後に流れた曲(ちあきなおみさんが歌っていた「祭りの花を買いに行く」)をBGMで3分近く使用しましたが、もしかしたらこれは長すぎはしないか?視聴者は途中で飽きてしまうのではないか?
周りのスタッフに何度「大丈夫です」と言われても、放送中もずっと心配していました。
ね、臆病でしょ。
豪胆と繊細は紙一重?
でも音楽の問題などしょせん、番組の表面的な話です。もしそこに嘘や偽りが関わってくると話はのっぴきならなくなります。
皆さんもまだ覚えているかもしれませんが、以前、関西の健康番組でデータを捏造した番組を放送して大騒動になったことがありました。
僕は同じディレクターですからその時の様子はある程度は想像できます。(ある程度です)。彼らは見通しの甘さもあったんでしょうが、それより一番の原因は放送前に制作陣が精神的にかなり追い込まれていたんでしょう。しかもきっとそれは番組が面白いか面白くないかというレベルで追い込まれていたのです。
人気番組だから無理もありません、しかし放送までにある程度あがいたのならもう腹をくくって今、持っているものでなんとかする潔さも必要だったんじゃないでしょうか。
これはディレクターの臆病さが「虚偽」という形であらわれた残念なケースです。
良いプロデューサーは番組の防波堤
逆にプロデューサーは豪胆さが必要なのかもしれません。
数年前、ぼくが大好きだったプロデューサーに言われたことがありました。
「番組を面白くするのはもちろん大事や。でも、とことんあがいてもどうしても無理なときは俺に言うてくれ。追い詰められる前に俺に言うてくれ。仕方がない時もある」
これを聞いてかなり安心しました。こんな事を言う放送局のプロデューサーははじめてでしたから。
その方はいつも年賀状にも「今年も後進ディレクターたちの良き見本になってください」と書いて送ってくださるような後輩想いのプロデューサーでもありました。
もう会えませんけれど。ご冥福を祈ります。
ディレクターには臆病さと、あとは潔さと遊び心が欲しいですよね。
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