お早うございます。早起きディレクターです。
よくテレビの仕事を旅館やレストランになぞらえて説明する人がいます。
お店の支配人やマネジャーがプロデューサーで献立を作るのが構成作家。そしてじっさいに料理をつくり味付けするのがディレクター・・・こんな例えを聞いたことがありませんか?
それはおおむね正解です。でもあくまでもスタンダードな例えです。
番組のディレクターのタイプによるからです。
テレビディレクターの仕事のやりかたは人それぞれ
「とびだせ!えほん」の場合は構成作家は存在しません。
これは予算の都合もありますが、担当ディレクターがなんでもやりたがるタイプだからです。台本作りからナレーション書きから、なんなら編集の音付けまでしますから音効さんもあきれています。
これがうまく作用すれば家庭的な温かい手作り感覚の番組になります。
悪く作用すれば独りよがりでマニアックな番組になってしまいます。
だからなるべく色んな人から意見は聞くようにしています。(もちろん皆さんのご意見も)
事実、有能な構成作家やリサーチャー(=ネタや情報を調べる人)がいることでディレクターが助かるケースはたくさんありますし、僕も過去なんども恩恵を受けています。
僕が好むのは俯瞰(ふかん)で物事を見られるタイプの構成作家ですが、そんな人がそばにいるとディレクターはかなり安心です。
若い頃は「ふるさとZIP探偵団」という番組のベテラン構成作家から数多くのことを学んだものです。ただ、ディレクターが安心だからといって作家に任せすぎるのも考えものです。結果的になんのこっちゃわからない味付けになってしまいます。
たまにディレクターから構成作家まで、やたらシステム的に人員を配置、組織したがる番組もありますが、それもケースバイケースで考えたほうが良いのではないでしょうか。
むやみに会議が長くなるばかりで非効率です。そして最後はADが泣きをみます。
ただ「とびだせ!えほん」でも初期の頃はリサーチャーにお願いして情報を仕入れていた時期もありました。
「京都鞍馬口編」や「京都一乗寺編」などはリサーチャーによる情報と現場でのアドリブ感が上手にまじわり、けっこううまく行った回です。
これも再放送したかった「京都市鞍馬口編」(2012年6月放送)
そして建勲神社を経て鞍馬口へむかいます。
今回のテーマはこの学生が行き交う「鞍馬口通り」
この通りではほとんど事前情報をもとにロケしたんですが、こういうネタを追いかけての取材の場合ディレクターはかなり気が楽です。
でも、油断するとえてして単調な展開になってしまいます。
この日はいきなり銭湯のような外観の喫茶店を発見(とはいってももちろん事前に下見してますからディレクターは知っています)。
こんな珍しい喫茶店なら視聴者も興味がありますよね。こういった情報の場面ではたいてい説明的なナレーションが入るものです。
じつは喫茶店 |
「鞍馬口通」はなつかしい学生街
ここで長谷川さんは昔懐かしい”ラッシー”というヨーグルトのようなドリンクを飲むんですが、そこまでは事前に想定している展開です。この後に”どう遊ぶか”がディレクターの腕の見せ所であり、お楽しみでもあります。
ここでは人の良さそうな店長さんからラッシーへのこだわり話を聞き、最後はお互いの帽子を交換して交友を深めました。
こんな場面に長谷川さんの絵文が加わると途端に現場はいきいきと動き出します。そして「とびだせ!えほん」の世界になります。
帽子を交換
さすがに学生街には喫茶店が多い。「ガロ」というどこかで聞いたことのあるようなお店もありました。
ここは喫茶店が連続するのであえて中には入りませんでしたが、あとで後悔しました。
こういうごくふつうの喫茶店こそ丁寧に取材すべきコーナーなんです
ここで気分を変えるために突然おじゃましたのが京都に多いレストハウスです。かわいい従業員さんが明るく応対してくれました。
学生以外にも外国人のバックパッカーなどがよく利用するそうです。
下宿のような部屋にあるベッドで天井を見つめる長谷川さん。
なぜか青春を想い叙情的になります。もう戻れない日々でも思い出したんでしょうか。
そして最後に本物の老舗銭湯にたどり着くんですが、実はこの銭湯にいきたかったから鞍馬口を選んだといっても過言ではありません。
この日は営業前からの取材で、開店間際の銭湯のあわただしい模様も撮影できました。
まさに昭和のドラマ「時間ですよ」の世界でした。
でもどんな展開になるかは当日行ってみなければわかりません。
なぜなら段取りのないスリリングな展開がこのコーナーの味だからです。
この鞍馬口の回のように事前に調査した時でも長谷川さんが歩くとそうは見えなくなるから不思議です。事前情報と現場の空気がうまくかみ合うよい例です。
以上、これも再放送したかった「京都鞍馬口編」でした
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